議論を装ったポジショントーク?
「アニメーターの報酬は是正されつつあるが、演出・監督はさらに厳しい。少なくとも、スタジオとメーカーの中間管理職といったポジションから抜けない限り、両手両足を縛られたままだ」
この意見について、どう思いますか?
もっともらしそうに書いていますが、少なくとも議論にはなっていません。
私としては、見当違いのポジショントークと感じます。
解説
というのも、前半は報酬の話ですが、後半は仕事のポジションの話です。
便宜的に、アニメーターを下位職、演出・監督を上位職(演出程度だと、まだ下と思いますが…)と定義します。
すると、前半の話は、下位の賃金報酬が是正されつつあるということですよね。
これは良いことではないでしょうか。
少なくとも、下位の賃金報酬が是正されなければ、上の賃金が上がることはないでしょう。
本来なら、物価デフレーターに沿って10倍くらい賃金を出さないと、他国に乗っ取られてしまいますので、是正されたと言ってもまだまだだと思いますが、これはおいて置いておきましょう。
次に、後半の話は、仕事のポジションの話です。
これは、そういう間に入ってなにかするのが嫌なら、ユーチューブにでも作品を上げればいいです。
というのも、仕事の板挟み状態というのは、ストレスが貯まる人も多いかも知れませんが、実は何をするかが常に明白であるというメリットもあります。
それから、独立したからと言って、好きなものを作ってそれがウケるわけではありません。
例えば、好き勝手に漫画を描いてジャンプに持ち込みしたとしても、それが箸にも棒にもかからないなんて人は掃いて捨てるほどいます。
要するに、独立してようがそうでなかろうが、仕事はクライアントの要望を満たしたら、はじめて金銭が発生すると言うだけの話です。
しかし、上記のような書き方だと、「アニメーターより監督の待遇を優先しろ」みたいに聞こえてしまいます。
それ以前の話ですが…
それ以前の話ですが、やはりこの手の話は、「あるものを下げてあるものを持ち上げる」という論法ですから、この話そのものが不愉快で嫌われます。
「実は静岡県、県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。」
これ、辞職した某知事と話し方がそっくり似ていませんか…?
不快感を撒き散らすことで、嫌われているだけなことを、「注目して気にしてもらえている」と勘違いするおかしな連中が増えていること自体が、とても深刻な問題です。
労働条件の改善を訴えるのが正解?
「北米アニメ制作会社のアニメーターの職場環境や労働条件は素晴らしい。理由を尋ねたら、「私たちは組合で情報を共有し、不当な低賃金で雇う会社があれば拒否し、アニメーターの待遇を守っています」と答えていた」
この意見にも、大いに議論の余地があります。
というのも、この北米の会社が何を指しているのか分かりませんが、資本、予算規模が分かりません。
資本が巨大なら、それだけ賃金は多いでしょうから、労働組合以前に賃金は多くなるわけです。
つまり、これも北米アニメ会社の一種のポジショントークの可能性はあります。
賃金を上げたいなら、ふつうは予算を引っ張るのが先ではないでしょうか。
たとえ、アニメーターが労働組合を作って争議を起こしたとしても、予算を引っ張ってこないことには、無い袖は振れないわけです。
ということは、プロデューサーだったり、制作サイドの問題で、監督の話は二の次になります。
こういうふうに、どこの話をしているのかを明確にしないと、意味のない雰囲気論で盛り上がるだけで改善しないままになってしまいますよ。
バズっている意見は、この傾向が顕著です。(だからバズるんでしょうが、中身がないので時間の無駄です)
労働組合も大事ですが、なによりIPを3分の1取得すべきです。「制作会社が著作権の一定割合(3分の1)を確保できるような制度を、政府主導で10年程度の時限措置で導入すること」