「ファンとアンチ論」の落とし穴
SNSやネットのコミュニティの中で、「そこにそぐうスタンスを取っていればファン、そうでないのに関わるやつはアンチ」のような括りは、ネットやSNSなどのコミュニティを俯瞰すると、同調圧力のように存在します。
しかし、ここには大きな落とし穴が存在します。
そもそも、人間はロボットでは無いため、何かについて100%ファン的態度も100%アンチ的な態度も取りえないという前提を忘れているわけです。
コミュニティには強い同調バイアスがある
コミュニティである以上、全体的な力場として「同調バイアス」がかかってしまい、「自分はここは好きだけど、ここは絶対おかしいと思う」みたいな是々非々論(聡明、常識的なバランス感覚ある意見)はコミュニティからアンチと見られかねなくなってしまうわけです。
ここに、ネットやSNSのコミュニティの「大きな欠陥」が存在しています。
たとえば、いま某大物芸人の問題が話題ですが、彼は被害者がいるのにも関わらず、「事実無根」と言い張りました。
刑事事件になるような客観的証拠がないからと言って、被害者が存在しないことの証明にはなり得ませんが、残念ながら、ファンの多くは「彼はなにも悪くなかった!」とばかり騒いでいます。
「刑事事件にならない記事を書いた週刊誌は無くなるべき!」と言い張る過激なファンもたくさんいました。
つまり、ファンは良かれと思って芸人をかばっているつもりですが、その言動こそがかえって彼の現状認識を妨げるわけです。
さらに、このタイミングで「週刊誌も悪くない」とか、「被害者がいるから謝罪すべき」みたいな主張をネットやSNSですれば、アンチ認定されかねないわけです。
このように、ネットやSNSには、有名人がどんどん頭が悪くなっていく土壌がすでに出来あがっているわけです。
一方で、首都圏で街頭調査をすれば、意外にも多様なスタンスや意見を聞くことが出来るはずです。
ネットSNSには一言程度しか書き込めないし話せないですが、人間というのは意外に奥深く、一人一家言くらいは持っているものです。
ネットSNSが大きく現実とズレてしまい、もはや別物なのです。
ファンが増えるほど重要な事実や真実が隠されていく
このように、ファンが増えるほど、声の大きな部分ばかりが目立つようになり、本当のことがますます語られなくなります。
そもそもファンとは何か、彼らは本当にファンと呼ぶに値するのか…など、色々と考えさせられるし、見方によれば「もしかすると、ファンという皮を被った純粋なアンチではないか」とさえ思えます。
さらに、「臭いものに蓋をする」という日本人特有の悪い心性が、都合の悪いことへの隠蔽を加速させるのです。
※「芸人殺すにゃ刃物はいらん。 芸を三回褒めりゃいい」とはよく言ったものです。
マトモな人ほどファンにならない
このように、一括りにするのではなく、意見や言動への不一致から賛同はできないという人はたくさんいます。
もちろん、言動に失望したという理由から、ファンをやめる人、中には単に腹いせに不満をぶつけるだけの人などもいます。
しかし一方で、「この人のここには同意できない」みたいなケースは実に多いです。
また、もともと無関係だったものの、実際に言動が迷惑なので仕方なく反対するという人もたくさんいます。
つまり、100%ファンということも、100%アンチということも、まず人間社会ではスタンスとして成立し得ません。
しかし、ネットやSNSには、100%ファンか、そうでなければ100%アンチだとみなしたがる風潮があります。
その設定からしてズレている※のですが、ネットで喧しい人ほど、ネットの話をそのまま真に受けて、「あいつは俺に賛同するからファン」「反対意見を言ってきたからアンチ」という小学生レベルのノリでひたすら騒ぎます。
最近だと、「エヴァのマリはモヨコ」を公式が否定したことは有名ですが、わざわざ公式自らが否定した意図として、こうしたネットやSNSの背景が構図として存在しているからです。(権威的だと批判がありましたが、その点を差し引いてまで、そうせざるを得なかった背景が存在したのです)
※デリダ調に言うと、「二項対立の脱却が出来ていない」ですが、また私の溢れんばかりの教養が思わず出てしまいました。この手の問題って、評論系の術語を使うと一発で定義が済むのですが、分からない人が多すぎるゆえ、あえて話題を分かりやすく書いているのです。
SNSの幼稚な捉え方は「毒」なので注意
ネットやSNSでは、「あいつは反対意見を言ってるからアンチだ」みたいな考え方をすぐするような連中とは、なるべく距離を取り付き合わないようにすべきです。
そうしたノリを現実でやっていれば、ただただ幼稚で気持ち悪い人になってしまうので注意しましょう(意外にいますが…)。
ネットやSNSでは、匿名掲示板からの影響からか、いまだに国語力が低い人ほど悪い意味で目立つ構造があります。
くれぐれも注意しておきましょう。