絵を描く際に知っておきたいこととして、絵の本質の話があります。
絵の本質とは、
A意味のある形を作って
B意味のある場所に置く
ということです。
当たり前すぎますよね。
でも、ほとんどの人がこの話をちゃんと理解できていません。
絵を読む力、絵を描く力、全ての基礎になる考え方です。
逆に言えば、最初にしっかり理解しないと、いつまでも絵が不思議な世界の話になってしまいます。
では、説明します。
Aについて
ハサミの形を思い浮かべてください。耳があって刃先があって…という感じで、ハサミの形は、大きさや比率がだいたい決まっています。もちろん種類は色々ありますが、ハサミと認識される形は決まっているのです。これが、意味のある形です。
Bについて
頭の中で、ハサミを学校の机に置いてみてください。学校の机の上にハサミが置かれると、生徒が工作に使っている文房具という認識になります。場所により、ハサミの用途が限定されるのです。これが、意味のある場所に置くということです。
世の中のものは、意味のある形が意味のある場所にあることで、人は初めて全体の意味を認識します。
逆に言えば、意味のある形が意味のない場所にあっても、意味をなしません。
意味の分からない形が意味のある場所にあっても、同様に意味をなしません。
また、同じ意味のある形であっても、意味のある場所が意味を変える場合もあります。
学校の校門に子どもが入るのか、大人が入るのかで意味が変わります。
多目的トイレに車椅子の方が入るのか、男女が入るのかで意味が変わります。
※当然、後者は社会的にダメです。
もし、あなたが意味のある形を意味のある場所に描ければ、事実上どんな絵でも描けるようになります。
しかし、意味のある形はひたすら練習して手に覚えさせないと、描きこなすのはほぼ不可能です。
さらに、それを意味のある場所に配置するには、比率や大きさだけではなく、絵の上の空間感覚が研ぎ澄まされていないといけません。
知識だけではなく、身体を通した肉体的な鍛錬で、これらを技術として獲得しないといけないのです。
人はよく見知っていることほど、再現するのは案外難しいものです。