「働きつつ最低限の金を稼ぎながら、絵を練習する」といった考えは、一見バランスが取れていて悪くなさそうですが、実は重大な落とし穴が存在しています。
個人的な経験上でも、実は「あれをやって、こっちをやって…」という綱渡り状態に自ら入り込むことになり、かえってものごとが中途半端になってしまうのです。
逆に、絵のこと以外がなるべく少ない人ほど、成功確率は高くなります。
よく、「絵ばかり描いているんじゃない」と言われますが、こういう人はすでにある意味で自身の上達について見切ってしまっている人です。
要するに、「余裕がある人の戯言」というわけですね。
たとえば、よく言われている親については、社会では別の個人であるため、自分で必要以上に恩義を勝手に感じて何かを返す必要は一切ありません。
これはあなたよりむしろ、親自身が実は一番良く分かっている話です。
もちろん親孝行というのは美しい話ですが、それは珍しいから美談として世間でもてはやされるだけなのです。
ちゃんとした絵の技術や実力がないのに、誰かに何かを返そうと思うのは考えてみればおかしな話です。
「力なき正義」という状態に陥ってしまいます。
哀しいことに、そういった美しさに酔ってしまうわけですね。
とくに今はSNS時代なので、美しい話にあふれていますが、実際にそういう人に話を聞き出してみれば、全然そんなことはなかったりします。
逆に言えば、実力があれば勝手に返っていくものです。
つまり、世間で一番怖いのは、こういう「〇〇したほうが良い」といったささやきに惑わされてしまうことです。
例外の人もいるでしょうが、大抵の人はやらないことをどんどん決めていくことで、上達の効率はその分飛躍的に増します。
SNSをやらないほうが良いかも…というのも、実はこういう理由だったりします。
「力なき正義は無力(無能)であり、正義なき力は暴力(圧制)である」
パスカル『パンセ』