荒く描くことで描けるようになるという話があります。
ラフに描く、大きく捉える感覚がつく、などの理由から各所で推奨されます。
その話自体は間違いとは言えませんが、弊害もあります。
一度ラフな描き方を数ヶ月やって、戻ってきたら意味なかった…ということも良くあります。
そこで、まず、何のために絵を描くかということから考える必要があります。
絵の理解はフィニッシュから覚えていくことで始まります。
フィニッシュまでに5段階あったとしたら、そのラフは1234のうち、どの段階に該当する絵かを考えないと意味がありません。
3か4の絵なら、どのような感じか。
1か2なら、どうか。
そういう理解もないのに、闇雲にラフな絵を描いても無意味な落書きが増えて、時間の無駄になるだけです。
であれば、フィニッシュ絵のトレスや模写に重点を置くほうがまだマシです。
さらに言えば、その描き方を訓練する時間が必要かという話です。
私は、個人的には、初心、中級程度の段階では言われるほど必要はないと思います。
ラフな絵を写して得られる情報は確かに多いのも事実ではあります。
しかし、初心、中級程度の場合、ラフ絵の意味を読み取ること自体が難しく、その描き方自体が自らサボる言い訳に使われる場合も多いからです。
これは自他ともに言い訳をしはじめてしまう、ということです。
こういったことを踏まえて練習を重ねないと、意味のない手作業を増やすだけになります。
つまり、描くことそのものが完全な目的化をしてはならないということです。
描くことはやはりどこまでも作業です。
捉えられているかが大切なのであり、「捉えるために描く」という感覚が一番大事です。
唐突に「ラフな絵を描け」みたいなことを言ってくる指導者がいたら、言動を疑ったほうが賢明でしょう。
ラフな絵には、「絵の読解力」が先に必要だからです。
「絵の読解力」は、なかなか身につきづらいところです。
そこそこキレイ目な絵を描いてバズった程度の人だと、その能力はないでしょう…。