絵が上手くなるためにはどうすれば良いかという話題は、人類の課題みたいなものです。
そこで、多くのお絵描き指導では「見たものをそのまま描くこと」といったアドバイスを耳にします。
しかし、人は残念ながら、「見たものをそのまま描く」のは不可能です。
というのも、人間は印刷機でもスキャナーでも無いですから、それは無理難題なのです。
ところが、多くの指導現場ではこの言葉を多用する人に溢れています。
そこで多くの人はこの無茶振りを真に受けてしまい、失意のまま断筆に追いやられていくのです。
さて、この悪循環を断ち切るべく、私が改めて指摘しておきたいのは、「人は見たものをそのまま描けない」という事実です。
ということで、まずはこの無茶振りによる無茶苦茶な思い込みを完全に消し去ることから始めてみましょう。
そのときに、どうすれば良いか考えることでしか突破口を開けないです。
ここにちゃんと向き合うことをしないと、絵は永久に上手くなりません。
むしろ、人は見たままに描けないからこそ、どうすれば描けるのかという方法を探します。
そして、この方法こそが、「真に絵を描く方法足らしめるもの」と言えるのです。
つまり、人はものを見たままに描けないからこそ、対象のキャンバス上における大きさを目視で確認したり、比率や角度を測る…ということをするわけです。
これが、見たままにものを描けないからこそ、人が生み出した絵を描く「技法」なのです。